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映画『ボストン市庁舎』観てきました

桜坂劇場映画『ボストン市庁舎』を観てきました。

長編のドキュメンタリー作品で、ボストンの市の行政を、様々な課題とそれに向き合う市民の姿とともに列挙し、政治と暮らしについてあらためて考えさせられる作品でした。

物語に多く登場する市長をはじめ、職員や市民などのインタビューはなく、実際の仕事や会議の様子、式典、集会、説明会などを映し出すなかで、課題の背景を想像させ、課題への関心の種をまくような見せ方が取られていたのが印象的でした。

この映画は、ひとつひとつの課題にスポットを当てた作品ではないのですが、沖縄で暮らす者としては、退役軍人の日の集会の様子が、どの場面よりも心臓をわしづかみにされました。集会の中で、戦地の過酷さと、そこから生還した後に待ち受ける虚無への恐怖が語られたかと思えば、銃を手に、家族の歴史と、国家や民主主義を守ったという誇りを語る場面もありました。沖縄との戦争観や軍隊との距離感の違いにめまいがしそうになるけれど、アメリカという国が伝統的に信じる正義や信念に基づいて本気で語っていることも、とても伝わってきました。正しいとか正しくないということを押し付けるような描写はなく、あくまでもその場であったことから構成されていたことで、観ている人が考える余白があり、その余白に助けられました。

地方自治体としての在り方について考えると、市民との対話を起点とした行政に力を入れていると感じました。もちろん映画に盛り込まれた部分がボストン市の全てではないと思いますので、その編集も含めたこの作品からのメッセージとして、地方自治体の目標とすべきあり方に刺激を受けました。民主主義の力を信じているというメッセージが、実際の人々の声や様子で強烈に伝わってきます。

那覇市では市民と一緒に市政の課題にあたる協働を推進していますが、協働が様々な場面で用いられているかというと、そうではないと感じています。「協働する」ための素地をつくる集まりを持ったり、人をつなぐ事業を強化したりしてきましたが、実際に課題に取り組む際のパートナーシップはまだまだ弱い状況です。

これまでに議会でも何度か「課題に根差した協働」を提言してきましたが、部署を問わず市民と協働するようにはまだなっていません。例えば「子どもの貧困」や「まちぐゎーの治安」など、いくつかの課題については部署横断的に様々な課が連携して対応し、主管となる部署が市民とともに解決方法を模索していますが、市民と直接話し合い、一緒に取り組むべき課題はまだまだあり、手段としての協働を覚悟を持って推進していく必要があります。コロナ禍で保健所の運営をはじめ、様々な部署で影響が出ており行政もかなり疲弊していますが、那覇市のまちづくりにおける基本的な姿勢としての協働を強く意識して、もっとまちへ出ていかなければなりません。今は誰にも余力がない時期ですから、行政に求められることは増えるし、不十分な点への視線も厳しくなります。それでも、やはり課題解決の糸口は市民の声の中にあり、現場で得られる情報が政策の精度を高めます。事実を集め、思いを受け止めたうえで、限られた資源の中で優先すべきことから行動に移すためには、やはり対話と情報共有です。

映画の中ではボストンの街の様子がたくさん出てくるのですが、那覇市との違いに驚くところも多いと思います。変わったところでは、ごみ収集の車がスプリング入りマットレスやバーベキューグリルをバキバキっと飲み込む姿は驚きでした。回収方法や分別の仕方はそれぞれ違うのでしょうけど、あとでより分けたりするの大変じゃないのかな。あと、交通管制センターのようなところで、職員が任意の信号の操作をしてたり、渋滞の要因となる違法駐車を通報したりしてたのはすごい。

なお、桜坂劇場では21日までの上映となっているそうですが、チケット購入の際に行政の職員証を提示すると少し料金が安くなるそうですよ。ぜひご覧ください。

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