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2019年8月臨時会について


8月5日那覇市議会8月臨時会がありました。

新聞等にも出ておりますが、今回は過去にないような議会でした。わかりにくい部分もあったかと思いますので経緯も含めてご報告いたします。

今議会では補正予算や消防車両の購入のほか、報告等が議案としてありましたが、すべて全会一致で可決されました。そして、当初は議案ではなかった、平成30年11月15日に議決された「議案第110号訴えの提起について」に関し、地方自治法第98条第1項に基づく報告を求める要請決議が提出されました。
説明としては、昨年11月14~15日に開かれた臨時会で同意された「議案第110号訴えの提起」が、実は議会の同意が不要であった。混乱を招きおわびするということでした。

経緯を説明すると、

議案第110号 訴えの提起については、那覇市内地権者の相続人である原告から那覇広域都市計画事業真嘉比古島第一地区土地区画整理事業の施行者である那覇市に対し換地処分の取り消しを求める裁判が提訴されていたが、平成30年10月31日に、換地処分取消の請求は棄却され、換地処分は他の権利者と比較して著しく不利益で違法であるとの判決が下ったことにより、当局から控訴のため議会の議決を求めるというものでした。

まとめると、市が原告に対して行った換地処分の取り消しは認められないけれども、那覇市が行ったことは他の権利者と比較して著しく不利益を生じさせ、違法であるということです。

那覇市としては換地処分が違法であると言われてしまうと、市行政の信頼が揺らぐということで、控訴したかったわけです。

議会の同意は得られましたが、その際、この議案には、全会一致で付帯決議(賛成するけどこういう点に注意してね、というような、議決に際して議会の意見を付したもの)が可決されていました。そのなかで、議案中、事件に対する取扱い及び方針では、「必要がある場合は、訴えの取り下げ、和解又は上告するものとする。」とあるが、 本件については、当該事業及び市民に与える影響を鑑み、議会においてはなお慎重な判断を要するため、上告する際は議会の議決を経るものとすることを強く要望する。 以上、決議する。とあります。

同意されたので市は控訴するわけですが、そこでも違法という判断になり、今回のことにつながります。

市は上告したい。しかし、議会の付帯決議があるため、もう一度議会に諮(はか)る必要があるのか。どうしたものか。

そんなおり、そもそも議会の同意を得る必要がないものだったことが発覚し、議会運営委員会へ説明した日に上告しました。

というのが今議会までの流れです。

そのような対応について議会からは批判があがり、 今議会での

平成30年11月15日に議決された「議案第110号訴えの提起について」に関し、地方自治法第98条第1項に基づく報告を求める要請決議 に至り、市からの報告を求めました。

その後報告に対しての質疑があり、 質疑を終えたのちに、抗議決議(本文下に全文を掲載)が出され、全会一致で可決されました。

すでに上告はしているので、議会として同意や不同意などの議決ができないため、抗議決議という形で議会としての意思を市に表明したわけです。

議会に諮(はか)らなくていいの?

訴えの提起 については、

地方自治法第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。

十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。

とあり、当局は議会の同意が必要だろうということで議会に諮ったわけですが、中段には・・・普通地方公共団体を被告とする訴訟・・・に係るものを除く。とあります。

抗告訴訟(行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟)の上訴の際には議会の議決を要しないという判決が平成23年7月27日判決で最高裁から示されており、今回の件では上告以前に昨年11月の控訴の時の議決は不要だったということです。

行政は議会に議案を上げるまでに、担当部署はじめ様々なチェックが入りますが、今回はそれに気づけなかった。

「いつ気づいたのか」については、市は7月の判決が出て、上告の準備をする中で気付いたとのこと。

昨年の11月の時点で気づいていればとは思いますが、議会も気づけませんでした。議会には行政から提案される議案の法的根拠を疑うという習慣がなく、議案の中身についての審査がほとんどです。行政のチェックをする議会の議員としてはお恥ずかしい話ですが、提出される全ての議案の法的根拠までを調査することは、実際には難しいと感じます。議案の提出権を行使する側(行政の時もありますし議会の時もあります)が責任を持って根拠を示して提出し、議論するというのが誠実な在り方ではないかと思います。特に多くの議案を提出する行政には、顧問弁護士や法規担当がいるわけですから、しっかり対応できる資源はあるはずです。

付帯決議はどうなった?

議会に諮る必要がないことが発覚したことを議会に報告し、市は上告したわけですが、それでいいのかという問題です。

昨年11月に議会が全会一致で可決した付帯決議は、議会の意思です。議会に諮る必要がないとしても、議決はされております。

「本件については、当該事業及び市民に与える影響を鑑み、議会においてはなお慎重な判断を要するため、上告する際は議会の議決を経るものとすることを強く要望する。」という意思をどう尊重するのか。

上告について議会に諮らないにせよ、報告や説明、相談はできたのではないか?このような観点からの対応が欠けていたことも今回の抗議決議につながったわけです。

最後に、あらためて抗議決議の全文をご紹介

「議案第 110 号 訴えの提起について」の扱いに対する抗議決議

平成 30 年(2018 年)11 月 15 日に議決された「議案第 110 号 訴えの提起について」は、真嘉比古島第一地区土地区画整理事業における換地処分の取消請求訴訟において、換地処分は他の権利者と比較して著しく不利益で違法であるとの敗訴判決を受け、控訴のために議会の議決を求めた議案であった。審議の結果、賛成多数で同意可決に至ったものの、なお慎重な判断を要するとして附帯決議を全会一致で採択し、上告する際は議会の議決を経ることを強く求めた。

しかしながら、このたび市長より、本件訴訟は行政事件訴訟法第3条第2項「処分の取消しの訴え」に該当する事案であり、地方自治法第 96 条第1項第 12 号の議決対象から除外されているとして、「議案第 110 号 訴えの提起について」の議決は不要であった旨の報告と謝罪の表明があった。さらに、去る7月 16 日付で福岡高等裁判所那覇支部にて本市敗訴の判決が下り、7月 30 日に上告したとの報告がなされた。

一連の市長執行部の対応は、議会として決して看過できるものではない。地方自治法第 96 条第1項第 12 号の規定は、「長の事務執行の前提要件としての議決事件」に当たることから、提案権は長にあり、議会は可否を決するのみとされている。議決の要否に係る判断は、法の趣旨からして偏に市長執行部にあることは論を俟たない。今回の事案は、議案上程に至る過程で法規上のチェック体制が機能していないことが露呈したものであり、市長の議案提出権を尊重し慎重な審議を行ってきた議会及び市民の信頼を著しく損なうものである。

また、昨年 11 月 15 日の議会における同意決議と附帯決議が事実上の議決行為として残っている以上、議決不要と判断された事案であっても、上告するにあたっては議会への速やかな報告と意見を聞く機会の確保を図る配慮があるべきである。

以上のことから、今回の訴訟事案に対する本市の一連の対応については、市民及び議会の信頼を大きく損なうものであり、強く抗議するとともに、再発防止と緊張感ある行政運営を求める。

以上、決議する。

令和元年(2019 年)8月5日

那 覇 市 議 会

あて先 那覇市長

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