これは昭和63年に制定した那覇市情報公開条例を全面改訂して 新たに制定したい、というものです。
情報公開の条例として、国民の「知る権利」を保障したもので 市民が行政に対して情報の公開を求めることができる条例です。
昭和63年に作ったときはかなり先進的な事例として注目されて いたようですが、時代に合わせて新たな課題に対応し、より適正な 運用を図るために改正するとのこと。制定から26年も経ってたんですね。
それに対して一般質問で同じ会派の前泊議員から 今回の全面改訂は認められないという意見が出されました。
改正の趣旨自体はいいのですが、その内容に気を付けなければ ならないとのこと。
私も条例の中身について精査するために、前泊議員からお話を 伺いました。
今回の改正、何が問題なのか。
条例全体の性格を表す第1条では 「市の保有する公文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、 日本国憲法の保障する基本的人権としての知る権利を保障する」 とあり、「地方自治の本旨に即した公正かつ民主的な市政の発展に寄与する」とあります。
つまり情報公開条例は市民の権利として情報公開を求めることを保障し、 行政には求めに応じて説明する責務があることを明文化しているわけです。
これはいいと思います。 その後も実施機関(行政や議会)の責務や公開を請求するもの(市民)の責務、公開の手続きなどが書かれています。 全文はこちらから(那覇市のホームページのPDF資料へ飛びます) そして今回注意しなければならないのが11条。 これは(権利の濫用)を規定しています。 ※濫用はむやみに使うことという意味です。権利をタテにして悪用するというような意味合いですね。
では条文を見てみましょう。 11条 実施機関は、この条例本来の目的を逸脱し、社会通念上適正な権利行使と認めることができない公開請求があったときは、権利の濫用として、当該公開請求を拒否することができる。
2 前項の規定は、公開請求者の言動、公開請求の内容、方法等から、次の各号のいずれかに該当することが明らかにみとめられるときにおいてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。 (1) 当該公開請求の目的が公文書の公開以外にあること。 (2) 公開請求者が当該公文書の公開を受ける意思のないこと。 3 実施機関は、第1項の規定により公開請求を拒否したときは、規定で定めるところにより、その旨を審議会に報告しなければならない。
さて、パッと見た感じ、情報公開条例の趣旨から外れた請求は拒否できるが、よっぽどのことがない限り公開し、拒否したあとには審議会という第三者機関に報告するという、自らに規制をかける条文のように見えます。
ところが、この条文が規定するのは市民が権利を濫用した場合の対応であるために、何が「濫用」になるのかを実施機関が決められる、という非常に危うい前提が含まれているのです。
何が濫用に当たるのか、という基準が実施機関の外になければ、最悪の場合、市民の権利が踏みにじられ、審議会への事後報告で済まされてしまうという危険性があるわけです。
もちろんこれは万が一にもあってはならない事態なので、条例の中にそのような芽をあえて入れる必要はない、ということです。
この条文がなければ、濫用と思われる方からの請求に対して「濫用」 であるかどうかを裁判で争う必要がでてきます。 そのぐらい「基本的人権としての知る権利」は重たいものだということです。
これはもっともな指摘だと思います。
行政の業務の効率化のために条例を制定するのではなく、あくまでも市民の権利の保障を最優先するべきであり、非常事態については条例を運用する中で必要に応じて規則などを設けて対応するべきだと考えます。
このほかに(公文書の存否に関する情報)の第10条についても 実施機関の恣意的な運用を防ぐためにより細かい規定を設けるか、 10条を削除して7条の公文書の公開義務の運用で対応することで 市民の権利を必要以上に制限しない条例にするべきということでした。 この議案の表決は20日の予算決算常任委員会と最終本会議の3月25日(火)です。 それまでに議論を深めていきたいと思います。